ウィークリー・メッセージ 20187

 

受難の主日(枝の主日)」


 

 聖マルチン病院 司祭 井原 彰一   

  四旬節の道行も主の受難のクライマックスに近づいてきました。当時、ローマの兵隊が凱旋してローマ市内に入場する時は馬に乗って立派なマントをまとっての凱旋でした。

それに対して私たちの救い主の入場は小さな子ろばの背に群衆が普段着をかけた上に乗ってのみすぼらしい入場でした。そこには貧しさと謙遜と平安がありました。

こうして主の受難の道行は静かに始まるのです。主は苦しみを通して復活へと進んで行きます。私たちの人生に於いても苦しみは復活へと開かれて行きますしかしながら、「こんな苦しみがどうして起こるのか」と叫ばずにはおれないような苦しみに遭遇することがあります。

  ここでは73歳の女性の苦しみの声を分かち合いたいと思います。その方(小林明子さん・仮名)は60歳の頃、唾液腺の腫れと痛み、口渇、外出時水筒を持ち歩く、息切れが生じるようになりました。その後徐々に発熱、関節痛、皮疹、肌荒れ、アレルギーの症状も生じ、更にはめまい、集中力の低下、うつ傾向も出現し、受診したところシェーグレン症候群と診断されたのです。この疾患は指定難病53の病気です。涙腺と唾液腺を標的とする臓器特異的自己免疫疾患です。全身性の臓器病変を伴う全身性の自己免疫疾患でもあり、難病に指定されています。

それからの10年はどこに行くにも水筒を持ち歩かなければならず、夜間も途中で何回も水分を補給せねばならず、また肌が荒れたり、関節が痛んだり、日常生活が次第に不便になって行くのを止めることが出来ませんでした。

忍耐をもって我慢強く生活していた小林さんは3年前にトイレでめまいがしてよろよろと倒れて、そのまま動けなくなってしまいました。救急車で搬送され緊急入院となりました。幸い2か月の入院で退院することが出来ましたが、全身の筋力低下、易疲労性が目立つようになり、更には眼瞼下垂も見られるようになりました。

神経内科で治療を続けておりましたが、経過から見て重症筋無力症の診断が下されたのです。この病気は末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患です。指定難病11に認定されている病気です

小林さんは現在何とか一人暮らしをしていますが、いずれは食べ物が飲み込めなくなったり、呼吸筋の麻痺により呼吸困難を引き起こし、人工呼吸器によって呼吸する状態になってしまうのではないかと不安で眠れない日々を送っています。何ということでしょう、この現実は!!一つの難病を担うだけでも大変な苦しみなのに、小林さんは二つもの難病を担いながら懸命に生きています

  主イエスは話されました。「あなたはこれらのことを知恵ある人、賢い人に隠し、小さな人々に現されました。父よ、そうです。あなたはそう望まれました。・・・・労苦する人、重荷を負う人は、すべて私のもとに来るがよい。私はあなたたちを休ませよう。私は心の柔和なへりくだった者であるから、軛(くびき)をとって私に習いなさい。そうすれば霊魂は休む。私の軛(くびき)は快く、私の荷は軽いからである。」(マタイ112529

一人一人が自分に与えられた重荷の深い意味はなかなか分かりません。

この主の御言葉を深くかみしめ、主の十字架と復活の秘儀を生きる道が深められますように・・・アーメン


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